un journal

「未知ある  陰ひとつない道歩く曇り空 君のさびしさはどんなさびしさ  く」

合宿中――短歌モドキ30

たった三日くらい
と言いつつも
たくさんの護身用の本を入れ  
密           か
 
 
携帯の電波が届かない場所で
詩を書いている
あなたに
向けて
蚊          いて
 
 
就職の決まらなかった人形の少女
は市場で売りに出され
しよ           蛆よ
 
 

難しく
言うのが趣味

そこの本
そわそわしすぎ
付き合い
きれない

 
 

父(自己啓発依存症)
エックハルト読んでる
憑く    大丈夫かな
春         と
 
 
神社にて居眠中の
はぐれ猫
によってたかって
撫でる人たち
じん     蛇
 
 
のぼるのぼる
安土城の階段を四十分で
帰るために
阿        ずち
 
 

静やかな島の木の葉
に火を放ちすべてを
台無しにする
少女  

 
 
歌集を読む
のはハイセンスだと皆に敬遠される
合宿中
はい            扇子
 
 
踏切
を渡った先に神社を見つけて帰ってきて
まだ夏だ  
わ              経った

わたしスピノジスト――短歌モドキ29

なんとなく神はヘーゲル
と説いたのを
後悔
わたし
スピノジスト
か         魅
 
 
いつまでも
毛布
にくるまり
ふかふかの冬の朝
のような天候
喪     うふ
 
 
紫の指輪
川沿いのゆうぐれ
あさって北へ

詩がかけない
あ    去って 
 
 
#好きだった給食言ってTLを給食にする
オレンジゼリー
き      齲蝕
 
 
表面が軋む
いっぱいのコップに
ミルク一滴
を加える
たび
惚       ぷ
 
 
 
#魔改造短歌の補助ルールとして d)少なくとも一回改行を加えること を入れるとかなり詩っぽくなることに気づいた次第.まあ要するにふつうの行分け短歌の魔改造ヴァージョンです.

紫の指輪――短歌モドキ28

紫の指輪欲しさに明後日のことあなたは詩がかけなくなる  斑さ き

まぶさびの滝彫ってある紫の指輪がほしいとってもほしい  ゆ 琵琶

なんとなく神はヘーゲルと説いたのを後悔わたしスピノジスト  か 魅

一五〇ページ程度の旅なら一時間で充分 いってくる  自由 ぶん

学生時代の終りと同時に寂滅するのが幸せやはり  じゃ 汲めっ
 
 
 

くっきーの墓――短歌モドキ27

淋しさが世界に戻ってきたことを伝えたいと思う雨の日  紗 びし

すべての私を代表して言う 人生楽しい? いやそうじゃない  わ 足し

涼しさは故郷の匂い故郷は踏切渡った向こう側に  文 きり

気怠さを不幸であるとするならば今日はよく寝た不幸な一日  ふ 恍

弟が今日も誰かを殺すのを見て見ぬふりをしている夢で  身 ぬ

気怠さの特効薬は散歩して空観そしてまぶさび行  け 弛

早起きしてくっきーの墓見に行って帰って寝て一日は過ぎ  は 華
 
 
 
#くっきーとは九鬼周造のことです

拒食症じゃなく――短歌モドキ26

友人と別れるたびに自意識が憑依し合うと考えてみる  ひ 用意

拒食症じゃなくて嫌いなだけです気にしないでと何度でも言う  きょ 私欲

通りからフランス語が聞こえたような気がしたままでいたかったの  と 檻

留守電ににゃあにゃあと声入れたいのを必死に抑える朝だった  荷 やあ

衆生みな睡眠欲を抑えられず今日も懺悔明日も懺悔  斬 げ
 
 
 

来世にやる――短歌モドキ25

ひ  帰郷して私の記憶を引き継いだ別の人になっている日々  美

ら  来世にやると答えてその存在を一瞬信じる猫みたく  威勢

どんな書肆にもある本になりたいカラマーゾフとか般若みたいな  判 にゃ

二階からコップ投げ捨てまぶしげな少年たちが服選びあう  ふ 苦

走って走って走って走って走って走って死ぬ夏の果  は 手
 
 
 

書くことに全存在なんて賭けたくないし――短歌モドキ24

雨音は遮れるけど花火の音は遮れないのかこの窓は  は 靡

まんかいんど・いず・いんこりじぶる 庭のミントみたくむなしさは殖え  む 梨

欠けた  書くことに全存在なんて賭けたくないしそんなの持ってないし  く

実は短歌は三十四字で 知らなかったの って罵倒される夢  芭 とう

台風吹き荒れる崇高のさなか部屋でずっと君とすれ違う  すー 恍

明日じゃなくて今日天気じゃなきゃ散歩できないじゃないのゼウスさん  あ 舌