本たちの街――詩モドキ2
あにの積み上げた本の塔がくずれ
ひとつずつ拾い上げようと
手を伸ばしたその先が
街になっていて気がつけば
なかを歩きまわっていた
歩くたびに失われてゆく
青空と街路の前世の記憶
詩の一節や
ニュアンスのきらめきを
新しみつつさびしみつつ
いつも周縁を歩いていて
けっして中心に近づけない
その崩壊した塔はわたしにまで
歪んだ鐘を響かせるのでしょうか
(なにもできないわたしでも
あの塔の解体ならできる)
わたしはただ街のはずれの墓地にゆき
あにの名を呼びたいとおもう
そして,そのまま,いつまでも
眠っていたいとおもうから
自分の存在をはっきりさせるために急いで
くずれ残った塔もくずして
瓦礫のひとつをつかみとって
かばんに詰めて外に出て
つぎはひとには生まれない
さようなら本たちの街
さようならあによわたしは
しあわせです