un journal

「未知ある  陰ひとつない道歩く曇り空 君のさびしさはどんなさびしさ  く」

夏だけど――短歌モドキ23

休日は蝉しぐれふる山下り遠くの書肆に詩集を買いに  や ま件

でも冬は寒いからいやと言える素直さをつくづく羨む朝  ふ 癒

夏だけどいつも空虚で夏じゃない祭りもどこもどんな日傘も  くう 拒

片影のように湿った雨あがりのアスファルトを君は蹴りゆく  あが 離
 
 
 
#いろいろと短歌を魔改造するルール考えたけど(とはいえ基本的に篠原教授のぱくりだけど)一番初めに思いついた,右に超絶短詩ひとつ添えるだけ,というのがやっぱり手軽でいいですね.

白鳥の滝――篠原資明と鈴木信太郎への敬意を込めて

 
      しよ     序
      出      あ
      理性     き
      ニア     ふ
      れ     討つ
      く     思惟
      虚      う
      問      う
      虚      う
      こそ     夜
      蔦      は
      ばた    着の
      位置     げ
      木で     う
      ち   句抱いて
      くれ     瑠
      野      か
      肩      く
      こお    伝手
      わ   刷れられ
      凧の水    う
      見よ水    う
      身の     ひ
      酔うかの   し
      谷      は
      野枯れ    え
      な    勝った
      ひ     娼の
      とう     銘
      な    雹かい
      月      き
      ま  取っている
      む    菓子の
      位置     わ
      野      は
      く     蝶は
      ふ     盲の
      ふ     湯の
      健汰    いが
      さん    桟と
      ひ   買ったと
      木      に
      園生きた   き
      幼稚を    う
      田      わ
      な    狩った
      矯め     は
      菜花    しー
      お     乗れ
      乗す    がた
      では   或る蛾
      じ    優の身
      に     時は
      な    垂れる
      き     帽も
      な      庵
      載れ     で
      あ      流
      とお     藻
      鋳だす    く
      う     環を
      ひ      亭
      し      手
      入る     は
      く      帖
      二句     う
      かん     荷
      よっ 手貸される
      ま      城
      な      固
      退くの    う
      お     九尾
      刃      く
      ね      裸
      背      て
      喩    するで
      あ      露
      う    蹴れど
      もそ    例は
      唾さ    がち
      叙      う
      に      寅
      割れた    き
      よう    賦で
      は     綯い
      苑      じ
      ゆん     睡
      な     蚊が
      や      奇
      がこ     野
      ばし    世に
      て    鋳ちゃ
      草競る    ま
      ぼろ     詩
      速      く
      弐     もた
      汰      ぬ
      つ    違法の
      さ     菜か
      似合って   は
      朽ち     よ
      う     画素
      飲み     に
      突ける    け
      胃別の    ひ
      やや     華
      な      癒
      眼に     し
      ずん   デジャ
      くねん   都市
      手      う
      ご      華
      な      威
 
 
処女であり、生気にあふれ、美しい 今日といふ   
今日こそ 酔つた鼓翼の一撃で 打砕いてくれるのか、 
堅く冰つて忘れられたこの湖を、湖の氷花の下には   
遁れ得なかつた飛翔の 透明な氷塊が 憑き纏つてゐる。
 
昔の一羽の白鳥は、不毛の冬の倦怠が 燦々と
光つた時に、その生きた境地を歌わなかつかため、
華々しい己の姿ではあるが 自由の身に
解き放たれる希望もない己であると 思出す。
 
空間を否定してゐる白鳥に 空間によつて科される
眞白なこの苦惱を 頸は 拗らせて揺るであらう、
けれどもそれは 翼が地上に囚はれた恐怖ではない。 
 
その純粹な輝きが この場所に定著させる 幻は、
役にも立たぬ追放の間にあつて 《白鳥》が その身に
著ける 軽蔑の冷やかな夢に沈んで、寂然として動かない。
 

魔改造短歌 A-side

#これまで詠んだ短歌に魔改造短歌のルール a) を適用して超絶短詩を添えました.順番はほぼ制作順です.
#以下本文
 
 
 
まぶしさが網膜のように剥がれ落ち複製できない暗がりにいる   もう 幕

郊外の無限へと続く長い道を見れればそれで満足だった   む 絃

外に出ようと思ったら夕立 意識はどこから降って来るのか   縊死 き

幸福を幸福と認識した瞬間に訪れるさびしさよ   こう 噴く

失明も魔法のようになおるはず壊れためがねのひびのきらめき   綺羅 めき

カフェオレで酔いつつ書読む雨の夜 飲んだことないカルーア・ミルク   あ 眼

しあわせな夢からさめた朝ぼらけむなしく唱える世界なくなれ   背 かい

せつなさよりさびしさがすき読み終えた小説を読み返せず閉じ   刹那 さ

時の上に懸かった月を友としてとおい祭りの夜を想う   ま 吊り

平日の病院の食堂での午後は幸せであるべきだろう   ご 娯

まぶしくて曇り空から目をそらし小雨ふりそそぐ橋渡りけり   わ 足りけり

服の色を世界の色と取り違え身にふりそそぐ白いさびしさ   そ 削ぐ

もう秋で海を知らせるポスターは古いと思った六月だった   あ 黄

涙とか帰依よりもただ純粋なさびしさもとめ書をめくる午後   眼 くる

永遠の神の観念のさびしさをひとは恩寵と呼ぶのだろう   えい 円

いたいけな文学青年つかまえて気が狂うまで書かせてみたい   聞が く

わたしには書けない文を書ける人 無限に妬んだあとのさびしさ   ね 嘆だ

この罰は誰が考えたものなのか毎朝鏡を直視すること   ちょ 櫛

呼吸すらまともにできないこんな世界のいじわるいじわるいじわるいじわる   ま 友

世界史と宇宙の重みを比べればさびしさだけが後に残れり   う 躊

天空に聳える雲を友として黄昏時の郊外をありく   あ 陸

入り組んだ道の奥なる空間は夕空を取り込む空虚なのだろう   言うぞ ら

黄昏時のブルーとピンクと黄金を包み込むのは紫の空虚   おう 厳

暑くても散歩しないとどうにもだめだ 私が世界に追い付くために   桟 ぽ

と 教室の扉のむこうで話す声こわいこわい関わりたくない ビラ

消滅と過剰のはざまでかくのだひとはそのたびごとの永遠のため   その他 び

余白がありトーンがあるのが詩なのなら改行の多いブログは現代の詩   よ 箔

いつまでも昨日と今日のあいだにて何かを忘れ何かを学ぶ   わ 摺れ

睡眠がひと本来の空虚なら眠れるひとに罪はないだろう   す 移民

短詩形の断片性が気に入ってもうずっと長い詩をかけずにいる   だん ペン

五分前に生まれたとしても私は私のままなのだろう   護符 ん

散歩しようも歩くたびに痛みだし目の前がひどく遠い夕暮れ   い 民

そびえたつ書物の塔と階段が世界のすべてならよかったのだけど   そ 冷えたつ

擦りガラスの外の景色が真っ青でやっと世界が空虚になったと   まっ 棹

スクリーンの ikb 好く りーん 斜めから見ればまぶさび色に染まれり

川沿いに幻視した海かがやけり 青と金色のノクターン浴び   退く たーん

読むことにしていた本が永遠の未来に逃れてゆく初夏だった   しょ 火

言葉のない夏の空虚をふみしめて かがやく自転車の列を横切り   じ 転写

夏空のそびえるような空虚さに祝福された横断歩道渡れり   師ゆく府 く

かぎりなく勝手な解釈で書を読みその解釈に救われた午後   会社 く 

現実では怒ってないのに大切なものを壊してしまった夢だった   ゆ 女

風の日の友人と会った瞬間に煙のように詩想は消え失せ   け 無理

軽装で学校に来ただけなのに 衣替え? と二人に訊かれた   け 位相

持ち歩く本の厚さは世界の厚さ 薄雲の空を覆えり   う 直ぐも

季節なき視覚世界の空虚さのそとからゆんゆんと電話鳴る   し 核

それだけでもう淋しいことだ 朝起きた世界にひとが存在するのは   あ さ於き

遠景に瞬間移動できるならそのさびしさも消えるのだろう   春夏 ん

〈美〉ではなくただの記号であるはずだ山の麓の街の姿は   ふ 素

ゆるやかな夢の世界に二日酔い なんだか世界が滅ぶ気がする   ほ ロブ

朝起きてカフェオレからのしばらくが生まれた瞬間のように尊い    う 稀

わた雲に向かって飛び立つ鳩の群れに思わず頭を低めて   わ タグも

今しかできないことだから 平日の午前中に散歩するのは   御膳 ちゅー

ひ 起きるたびに生まれるわたしがわたしだったものの仕事を引き継ぐ  木接ぐ

志望動機の白紙のうえにも永遠の空虚はあるのだろうか   は 苦し

夏空のもと座ってパンかじり 足元に集まる雀の声   あ 詰まる

足下に飛びまどう蝶とともにあてもなく五歩の道を歩んだ   ご 穂

ゆうぐれの氷雪のような雲がわたしを濡らしわたしを見捨てる   ひょ 右折

ニ時間の眠りの後に起きるだけでもひとは生まれ変わるのだろう   虹 かん

早起きしすぎて春の正午のような感じのする夏の朝だった   し 擁護

夏の朝に春の正午を感じつつ布団にくるまり二度寝せり   は 瑠

二度寝して起きたら正午だったとうたう日光菩薩の詩よめり   う τ

六月下旬の灰色の夕空はもうすっかり秋な気がする   げ 潤

灰色の夕空見ればビル間にひとり空虚を穿つクレーン   く レーン

さびしくも雀の声はちゅんちゅんと樹木の葉から葉へ反響す   呪 もく

いつまでも季節を隠す透き通る灰色の空に包まれていたい  は いい炉

美しい詩を見たとたん立ち上がる無力さや窓外の青空   む 緑

さびしさは静けさだから音楽に演出されたさびしさ嫌い   き 頼

ひとは毎日生まれ変わるのに課せられた仕事は変わらぬままだ   ま 胃に血

さびしさにつらさを変換するアダプター との一致はありません   い 鎚

建物のパスワードわからず研究室に戻れぬ夕べだった   わあ 怒

本を読むのに適した場所を探して散歩に出るも空は低く   ひ 苦

あの霞んだ山の方ではまぶしくも雨が降っているのだろうか   や 魔

水滴が頁の上にあらわれて曇り空みすてて雨宿り   く 森

図書館の机に好きな本並べ離れた場所でべつの書を読む   は 慣れた

ただ一緒に歩いてるだけなのにデートだなんて言わないでほしい   で 絵と

そびえたつ書物の塔をながめつつ愛の鍵求め図書館デート   あ 射

世界の終わりと隣り合わせでいるという贅沢抱きしめ午睡   お 割

ビュトールの心変わりのきみを皆わたしたちの名に書き換えたい   びゅ 通る

海岸に沿って走る陽みるために海をさがしに川岸までゆく   は 汁

何日も書肆に通い読みあきた詩を御守りとしてレジに運ぶ   暑 し

たぶんこれから一週間くらい毎朝よむことになるのだろう   よ 無

大学生のうちに読みたいと書かれなさられてしまう欲望よ   よ 看たい

図書館に一度よんだ詩をさがしに行くときのこの距離感がすき   師をさ がし

さびしみのなかに幸せを求めよこれがおまえへの遺言だと   お 舞え

さびしみを理解できないひとという概念自体がすでにさびしい   ひ 徒

二日後に忘れてしまうと知りながらさびしさ求め詩集めくれり   ふ 塚

かがやきが消えるのこわくてたやすくは読み返せずに書架にもどず詩   き 得る

しあわせを求めて買ったりんごジュースしあわせ濃くて水で割った   じゅ 臼

さびしさを求め歩いた賜物はおつりを渡す君の包む手   銃 む

歩くため雨が止むのを待てば夜いつまでふて寝すればすむのか   ふ 手ね

起きても起きても雨ばかりで降っていなかったと唱えてもだめだ   お 着て

なんということだカフェイン中毒の倦怠に詩が効かないとは   けん 態

雨の日のカーテンを閉めキジバトやせせらぎの音で部屋を満たして   かあ 転

川沿いを北へ北へと進みゆき片影に沿って引き返したり   ひ 着かえし

台風がくるまえなのに夕空は秋のようで外歩きたい   車 え

海岸のように霞む空見て待っていたおとぎの国の台風   お 研ぎ

大切にしまっておいた欲望の荷重に堪らず抜けた引出し   ひ 奇だし

曼荼羅のような光に照らされた石段のぼる真夏日の夜   ひ 仮

まぶしくも夏の夜めく夏の夜 音ゲーマーの君のゆびさき   お 妬

墓場まで持ってくほどでもないけれどせめてもと詩を書き写したり   は 樺

ね 海岸に打ち捨てられたまぶしさや眠気そだてる夏霧の朝  剥け

身の丈の半分もない片影に下半身を埋め歩いて   う 詰め

携帯と時計を捨てて街に出て河川敷をずっと歩けば   け 痛い

文字盤の八時三十分はもうすっかり夏の果な気がする   は 千路

川沿いに色とりどりの日傘すぎ詩集の目次を詩だと思う   ひ 蛾さ

中川の宿を調べればよく歩くまぶしい通りのすぐ傍で   や 戸

い エアコンの効いた部屋のさびしさに堪らず開けた窓より入る蚊  瑠伽

雨の日の庭を外から眺めつつ隠しているものを思いつつ   か 櫛

かなたより届く花火の音だけが涼しい部屋の中に広がり   と 毒

雨あがりの夕暮れ時の静けさは通りに出るまで続くよね   You ぐれ

通りすがりの車がひき殺すのは 烏の声 ひぐらしの声   繰る ま

クラインの死んだ日六月六日だから IKB は夏の季語   く ライン

雲間からふっと陽が差してきて私の身体にも深い陰影   韻 えい

未知ある  陰ひとつない道歩く曇り空 君のさびしさはどんなさびしさ  く

明け方の風と光と蝉の声 今日も今日とて浅き眠りを   ね 無理

死魔  早朝のひえさびたる部屋にてひとり図書館はまだ閉まっており  って

カフェイン中毒抑えるために水を飲む眠くて水だけで酔う   ちゅー 読

階段の上から落とした涙が地上に届いてありがとうね   トド いて

食パンを齧じり,ソーダを飲む 何かいけないことをしてる気になる   そう 惰

空白の擦りガラスよりふりそそぐ雨音だけが存在する朝   くー 吐く

べつの世界に迷い込んだ気もしたけど蝉の声は相変わらず   ま 酔い

早朝の散歩道目に映るものすべて短詩に分解してよ   たん 死

おきてねてねておきてねてねておきてねておきてねてねておきてねる   掟 ね


方法詩もどき!

 きっかけは早朝の散歩道で,いつもの道をいつも通り,目に入るものを超絶短詩*1に分解しながら歩いていたら,ふと短歌が降ってきた.
 
 早朝の散歩道目に映るものすべて短詩に分解してよ
 
 もっともこれは軽い推敲を加えてあって,その場で思いついたのはもっと拙いやつだけど,とにかくこんな感じの言葉が散歩中の頭をよぎったので,それをしっかりと意識にとどめて記憶して,家に帰ってノートPCを起動させて,キーボードで打ってみて見つめているうちに,後ろに超絶短詩をひっつけたくなってきた.
 
 早朝の散歩道目に映るものすべて短詩に分解してよ   たん 死
 
 実をいうと以前(とはいっても数週間前)から短歌のなかに超絶短詩を組み込みたいと思っていたのだけど,どうも自分の頭の中の短歌モドキ生成装置と超絶短詩は相性が悪いらしく,作れずにいた.それで今朝,短歌に組み込もうなんて考えずに,ただ二つの詩を並べればいいという,単純だけど自分にとっては新しい発想に思い至ったという次第.そんなわけで上の短歌モドキができあたったわけだけど,ふむ,誰でも詠めそうなうたのはずがちょっと現代詩っぽくなったかも.調子に乗ってもう一首詠んでみた.
 
 おきてねてねておきてねてねておきてねておきてねてねておきてねる   掟 ね
 
 超絶短詩をひっつけるという発想がなければおそらくこんなうたを詠むことはなかったと思う.明恵の「あかあかや」のうた以上に単純だけど,そのぶん並置された超絶短詩が際立つ.「掟 ね」という超絶短詩を添えることで,何も考えずに読むと「起きて寝て」になるうたが「『起きてね』て」とも読めるという可能性を読み手に示せた.ついでに今までに詠んだうたにも超絶短詩をひっつけてみた.以下はその一部.
 
 せつなさよりさびしさがすき読み終えた小説を読み返せず閉じ   刹那 さ
 
 川沿いに幻視した海かがやけり 青と金色のノクターン浴び   退く たーん
 
 朝起きてカフェオレからのしばらくが生まれた瞬間のように尊い   う 稀
 
 いつまでも季節を隠す透き通る灰色の空に包まれていたい  は いい炉
 
 これらのうたを見れば明らかなように,短歌に超絶短詩を添えることで,うまくいけば,短歌の意味を相対化する視点を持ち込んだり,短歌と超絶短詩の相互作用を通じてうたに深みを与えたりできる.というわけで,これからは正真正銘の短歌モドキを詠んで行こうかなって.
 
 最後にこの魔改造短歌の暫定ルールを記しておく:
 a)三十一文字付近の文字列(できれば短歌特有の律動感があるのが望ましい)にその部分列を超絶短詩に分解したのを添えること.添える位置は任意.
 b)三十一文字付近の文字列を構成する際,篠原資明が『さい遊記』や『サイ遊記』,『滝の書』で使用した

  師
 思+考はサイを振るのだと
  猴

や,
  
    玄 花
 虚空に ×  舞い
    幻 歌

のような表記を用いてもよい.
 c)複数の超絶短詩を添えてもよいが,その場合,連続した文字列を複数の短詩に分解すること.
 
 a)について,位置が任意というのは,例えば次のようなものを許すということ.
 
 スクリーンの ikb 好く りーん 斜めから見ればまぶさび色に染まれり
 
 ね 海岸に打ち捨てられたまぶしさや眠気そだてる夏霧の朝  剥け
 
 b)について,一例を挙げておく.
 
                         済
 歩くため雨が止むのを待てば夜いつまでふて寝すれば× むのか   ふ 手ね
                         澄
 
 c)について,例えば,
 
 まぶしさが網膜のように剥がれ落ち は ガレ お  複製できない暗がりにいる  血
 
は容認されるが,
 
 まぶしさが網膜のように剥がれ落ち もう 幕  お 複製できない暗がりにいる  血
 
は容認されない.
 

*1:超絶短詩については https://sites.google.com/site/mabusabi/ma-bu-sabi-you/chouzetsu-tanshi などを参照.

早朝のひえさびたる部屋にてひとり――短歌モドキ22

早朝のひえさびたる部屋にてひとり図書館はまだ閉まっており

カフェイン中毒抑えるために水を飲む眠くて水だけで酔う

階段の上から落とした涙が地上に届いてありがとうと

食パンを齧じり,ソーダを飲む 何かいけないことをしてる気になる

空白の擦りガラスよりふりそそぐ雨音だけが存在する朝
 
 
 

クラインの死んだ日六月六日だから――短歌モドキ+俳句モドキ

クラインの死んだ日六月六日だから IKB は夏の季語

雲間からふっと陽が差してきて私の身体にも深い陰影

陰ひとつない道歩く曇り空 君のさびしさはどんなさびしさ

明け方の風と光と蝉の声 今日も今日とて浅き眠りを
 
 *
 
夏の夜はまだ宵ながら蝉の声

短夜や蝉の声やんで鳥の声

早朝の静けさを裂くバイクあり

うたたねの枕に蝉のにわか雨
 
 
 
#俳句のほうは季語がなかったり二重季語だったりしますがまあモドキだからいいじゃないですか

夏霧の眠るともなき気怠さよ――俳句モドキ

しぶきあび ikb に染まる服

黄昏の ikb と混じりあう

夏空の低い雲より氷降る

雨しぶき水平線に雲の峰

夏霧や海岸のように霞む山

夏霧の眠るともなき気怠さよ

川沿いに色とりどりの日傘すぎ

かなたよりこの耳に沁む花火あり
 
 
 
#短歌の材料のつもりで詠んでたのが溜まってきたのでまとめてみたとゆ次第.
#イヴ・クラインの命日が 6月6日なのは一部の人にはあまりに有名なので ikbは夏の季語として十分機能すると思います.
#なお上のほうのは再掲ですが,俳句は俳句でまとめておきたいので.